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株式会社フォリウム(以下、フォリウム)代表取締役CEOの三好浩和と株式会社BlueMeme(以下、BlueMeme)代表取締役社長の松岡真功氏との対談記事です。
2023年3月、フォリウムとBlueMemeグループは、ローコード(※)技術を中心とするDX人材育成で事業提携しました。2023年7月、松岡氏が初めてフォリウムの八戸オーグメンテーションセンターを訪れた際、改めて両社の事業提携についてトップ同士が対談しました。
※ローコード開発
従来プログラマーが担っていた工程を自動化し、少ないプログラムコード(ローコード)で行うシステム開発。
ローコード開発への期待
― BlueMemeは、日本でも早くからローコード開発事業に取り組み、フォリウムも今回、新たにその事業を立ち上げました。なぜ、「ローコード開発事業」に取り組んでいるのでしょうか。
松岡)企業が、システム開発を外部へ業務委託することに課題を感じていました。
私がネット証券会社にいたころ、数億円かけて外注しようとしていたシステムを、2か月ほどかけて私一人で開発したことがありました。
私は社内の業務をよく理解していましたし、エンジニアとしての技術もあったため、ローコストかつ短期間で使い勝手のよいシステムができました。
そのとき、業務内容をよく理解している人がシステムを作るのがよいと確信しました。
その後、会社のシステム全体を理解するため、大手のERP(enterprise resource planning)企業を経て、ベンチャー企業でソフトウェア開発に挑戦しました。
そのときリリースした、ソフトウェアを自動的に作れるツールの名称が「BlueMeme」、いまの会社名です。
その後しばらくして、現在の会社を設立し、新たにスマートフォンに対応するツールの選定を行いました。そこで、海外も含めて100種類ほど調査して決めたのが「OutSystems」という製品です。
OutSystemsを使うことで、業務内容の分析からモデル化、システム開発までの期間を短縮できます。
現場に必要なシステムをリーズナブルに作ることができる、このようなシステム開発のあり方に市場の期待が寄せられていると感じています。
三好)私はもともと、中国で事業を立ち上げていました。
凄まじい勢いで成長する中国から日本を見ながら、「国が豊かに発展していくための要件とは何か」を考えていました。
そのころから人口減少が予測されていたこともあり、「日本の労働者の一人あたりの生産性を高めること」「仕事単位での生産性を上げること」が必要だと思ったんです。
フォリウムでよく使う言葉に「オーグメンテーション(拡張)」があります。
もともとコンピューターは人の能力を拡張するためにあり、コンピューター(技術)によって一人ひとりができること(自由)を増やしていきたいと考えています。
フォリウムのミッション「人と技術で自由を拡張する」の「人」は、お客さまと社員の両方を想定しています。
今後、よりお客さまのビジネスに貢献でき、かつ社員にとっても自身の能力を拡張できる技術を模索していたときに出会った「ローコード開発」は、まさにその考え方にマッチするものでした。
お客さまとエンジニア、双方に納得感のあるシステム開発
ー アジャイル型のローコード開発(※)の強みは、どのような部分にあると考えていますか。
※アジャイル開発
一方通行でプロジェクトを進める従来のウォーターフォール手法に対して、機能単位の小さなサイクルで計画から設計・開発・テストまでの工程を繰り返す手法。
松岡)アジャイル型の開発では、お客さまのニーズに合わせて納期や成果物が柔軟に変化します。お客さまも私たちも適正金額がわからないため、最初から大きく◯億円という受託を前提に見積もって開発することはありません。
たとえば以前、他社が◯億円という多額の見積もりを出したシステム開発がありました。私たちは、まず数百万円ほどの開発から受託します。
実際に動く成果物を都度お客さまに確認してもらいながら、必要に応じて機能追加をしていきました。最終的には億円単位にはなりませんでしたし、お客さまと私たちの双方に納得感がありました。
実は以前、ローコード開発を行っていた他の企業で、上層部から「ローコード開発事業をやめるように」との号令が出たことがありました。
システム開発が時間単位での契約形態だった場合、生産性のよいローコード開発では商売になりにくかったためです。いまのシステム開発の商習慣には、まだ合わないところがあるかもしれません。
三好)私たちの業務であるリサーチのオペレーション業務やバックオフィス事務では、お客さまに業務改善を提案する機会もあるため、ローコード開発は非常に相性がよいと考えています。
競争力向上やDX推進などの課題解決のため、お客さまとともにローコード開発事業を拡大していきます。
自身の能力を拡張できる、新たなキャリア形成の選択肢
ー ローコード開発は、市場やお客さまからの期待があり、技術を身につけることで新しいキャリアも描けそうです。では、どのような人材に、ローコード開発に挑戦してほしいと考えますか。
松岡)私の若い頃はあまり人気のなかったIT業界ですが、いまは学歴も問わず、若い人から見てもチャンスのある領域だと考えています。
一方で、未だにシステム開発の世界は「理系でないと入れない」「未経験では入れない」、狭き門になっている現状もあるようです。
BlueMemeでよく使う言葉の一つに「多能工化」があります。その言葉のとおり、社員にはさまざまな技術やスキルを身につけてほしいと思っています。
多少のミスマッチは覚悟のうえで、自身の能力を拡張したいと考えている人がいれば、企業としてその受け皿を作りたい。
まずローコードを覚え、徐々にキャリアを積んでもらうことで、エンジニアに育てていけるのではないかと考えています。
三好)同感です。現在のフォリウムの事業も、異業種・異分野から飛び込んできてくれた人材で成り立っています。
入社時にはITに関してほぼ素人だった社員の中には、いまや身に着けたスキルでお客さまの期待に応え、評価されている人材が多くいます。
これまでと異なるキャリア形成ができる環境を、地域に作っていきたいと考えています。
現場が技術を理解することで、よりよいシステム作りへのきっかけが生まれる
ー 2023年7月、八戸市職員向けのデジタル人材育成研修を共催しました。これまでもBlueMemeでは自治体や企業向けに多くの研修実績があります。研修実施により、どのような変化や効果がありましたか。
松岡)3日間ほどの研修であっても、参加者からは、眼の前のことを変えようとする動きが起きています。
たとえば、使い勝手の良くないシステムを、予算や慣習などのさまざまな事情で使い続けてきた現場の人たちがいます。
情報システム部門に改修を依頼しても、断られてきたようなケースも少なくありません。
これまでは「誰かが作った」システムを使ってきた人たちが、実際にローコードでプログラムを動かし、「自分で作る」イメージができてくると、そのシステムを変えられる可能性を感じるようになります。
現場の人が技術を理解することで、システム開発者たちが現場に対して簡単に「できない」と言えなくなり、社内で話し合いのきっかけが生まれています。
三好)ひと昔前に比べ、システム開発にとどまらず、コンピューターサイエンスへの入口にも来やすくなったと感じています。
ITエンジニアの仕事は経済環境や動向の影響を受けにくく、市場に対して強い耐性があります。
ITやDXの仕事は、世界とつながる共通言語ですから、その国や地域の経済環境に縛られにくい。ローコードによるアジャイルでのシステム開発は、「技術を身に着けたい」「ITやDXを通じてお客さまのビジネスに貢献したい」と考える人たちにぜひ習得してほしいと期待しています。
事業提携を、地域創生の新たな足がかりに
ー フォリウムは青森県八戸市と山口県山口市に拠点を置き、BlueMemeも新たに熊本などの地方拠点を立ち上げています。BlueMemeからみて、フォリウムと事業提携する意味はどこにあると考えていますか。
松岡)今回、フォリウムとの縁で、八戸市に来ることができました。
さらにフォリウムは山口市にも拠点がありますので、私たちだけではリーチできない地域で、一緒に仕事ができるという喜びがあります。
いろいろな地域で、新しいシステム開発の手法や技術をフォリウムとともに広めたいと思っています。
三好)私たちも今回の事業提携により、「すべての人が暮らしたい場所で輝く未来」というビジョンの実現に近づくと考えています。
ITやDXに興味関心がある人は各地域にたくさんいます。
自分の暮らしたい場所で働きたいという人たちのニーズに応えていきたい。私たちにとっても、地域創生の新たな足がかりを探していたときに見つけた、よいご縁でした。
いまスキルがあるかどうかではなく、学び続けられるか
ー これから、どのような人たちと一緒に働いていきたいと考えていますか?
松岡)ITやDXの業界で働き続けるためには、日々キャッチアップしながら、新しいツールを使いこなせるかどうかが問われます。最初は操作がわからなくても、新しいことを知り、それに適応できる人に向いています。最初はスキルがなくてもよいのです。
大切なのは過去ではなく、これからも学び続けられることです。
三好)フォリウムも、まさにそのような人材に来てもらっています。未経験からでも、いま活躍している社員はプロ意識が高く、いつも「お客さまのニーズにどう応えるか」を考えて実践しています。
異業種からのキャリアチェンジも広く受け入れた結果、プロフェッショナルな人材が育っています。そこに一つの可能性を感じられます。
ともに働く人材に期待するのは、これまで新しいことにトライしてきたかどうか、そして、これから学び続けられるかどうか。
経験者はもちろん、特に未経験の新卒の皆さんには、アジャイル手法のローコード開発を通じて、新たなキャリアを身に着ける機会を創出できる事業にしていきます。
ー 本日はありがとうございました。