コラム
八戸市フロントヤード改革の実現、「はちのへスマート窓口事業」に迫る
- ローコード開発
八戸市では2024年11月から窓口業務を大きく変えました。 その事業の推進者の古里さまに、窓口業務の利用状況などの可視化を進めたfoliumの担当者が八戸地域のデジタル化から事業の成果、これからの期待についてお話を伺いました。
目次
八戸市総務部 情報政策課 デジタル推進室 室長
古里 陽一(ふるさと よういち)さま インタビュー
八戸市では2024年11月から窓口業務を大きく変えました。
その事業の推進者の古里さまに、窓口業務の利用状況などの可視化を進めたfoliumの担当者が八戸地域のデジタル化から事業の成果、これからの期待についてお話を伺いました。

八戸市が地域全体で取り組むデジタル化の計画について
folium※以下FL)令和5年(2023年)2月に策定された八戸市デジタル推進計画は、2023~2025年度の3年間を対象にしています。庁内外含めて「チーム八戸」で取り組まれているている印象を受けます。計画の作成についてもさまざまな考え方があると思いますが、あえて内製で取り組まれたのは、どのような理由からでしょうか。
古里さま)コンサルタント会社にお願いするという選択肢もありましたが、市の職員でやってもできると判断し、「自分たちでつくらないと自分たちのものにならない」と考えました。
正直に言えば、予算の制約も大きな要因です。しかしそれ以上に、「外に頼る前に自分たちでやってみよう」という思いがありました。基本的な骨組みを市の職員で決めた上で、必要に応じて外部の意見も取り入れながら、内容の肉付けを進めるというスタイルをとりました。
八戸市にはIT・DXに関する企業や大学が集まっており、有識者も多くいらっしゃいます。庁外では「デジタル推進懇談会」という枠組みを通じて外部委員の協力を得ながら、庁内では市長を本部長とする「デジタル推進本部」を設置し、体制を整えて議論を積み上げてきました。
本計画の位置づけは、第7次八戸市総合計画に即して策定する個別計画ですが、2021年度~2025年度を対象期間とする、国が示す「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」の内容も踏まえております。

令和4(2022)年度において、市長を本部長とし、全ての部局長等で構成する「八戸市デジタル推進本部」を設置
当推進本部のもと、各課(室)長等で構成する庁内連絡会議を設置するとともに必要に応じ、ワーキンググループ(WG)を設置
FL)そのデジタル推進計画は、今年度で最終年度になります。その成果について教えてください。
古里さま)自治体システム標準化については苦戦しておりますが、83事業9割着手済みで概ねKPIは達成しています。
特にフロントヤード改革は、総務省の「令和5年度自治体フロントヤード改革モデルプロジェクト」選定団体になり、一気に進みました。全国的には人口10万人~30万人未満の自治体モデルとしても期待されています。
※総務省令和5年度自治体フロントヤード改革モデルプロジェクト(補正予算関係) 選定団体青森県 八戸市

自治体窓口フロントヤード改革(はちのへスマート窓口)を進めるまで
FL)「令和5年度自治体フロントヤード改革モデルプロジェクト」事業に応募に至るまでにはご苦労もあったかと思いますが、この事業に応募された背景や理由についてお聞かせいただけますでしょうか?
古里さま)もともと、市長の方針として実施したいという意向がありましたので、準備を進めておりました。八戸市まちの魅力創生ネットワーク会議における「若者意識調査」アンケートにおいても、八戸市におけるデジタル化を進めるために力を入れるべきこととして「行政手続のオンライン化」が1位になっており、市民からの期待も感じておりました。
バックオフィス業務においては、すでにRPA導入などは進めておりましたので、次のステップとして「窓口改革」に取り組むイメージがありました。そこで市民に向けては「はちのへスマート窓口」という名称でお知らせしています。
FL)はちのへスマート窓口(書かない・待たない・行かない窓口)を実施するまでには具体的にどのような準備をしましたか?
古里さま)庁内のデジタル対応人材を中心に、若手職員も巻き込んだイノベーションチームを組みました。また、国の窓口BPRアドバイザー派遣事業も活用しました。
特に転入手続きの見直しに向けて行った「窓口利用体験調査」では、ペットと一緒に引っ越してくるなどの住民モデル* を設定して検証しました。その結果、氏名を書いた数61回、住所を書いた数33回、生年月日を書いた数37回、書いた書類24枚、所要時間は1時間以上かかっているという実態が明らかになりました。そこから、「書かない窓口」を目指した改革が始まりました。
* 住民モデル:家族5人(国保加入、保育園入園、障がい者関係手続きあり)とペット一匹で転入した場合
FL)はちのへスマート窓口の導入において、職員や市民からの反応はいかがでしたか?
古里さま)当初、職員からもやり方を変えるにあたり、何らかの拒否反応などが起きるのではないかと危惧しておりましたが、実際にはほぼ発生しませんでした。職員への負担は少なく、手続き時間も短縮されています。
実際に、平均で24分以上かかっていた住民票等の複数申請の事務処理が、11分になっているケースもあります。
結果、実際にフォリウムにも支援していただきました職員・市民に対するアンケート調査でも、はちのへスマート窓口導入前に比べて満足度が向上していることが明らかになりました。
全般的に肯定的な評価をいただいており、特に若手職員からの評判は良いようです。システムに慣れてくれば満足度もさらに上がると思います。
タッチパネルの導入は初の試みでしたので、使いやすさにはかなりこだわりました。マイナンバーの読み取り機能なども導入し、システム連携によって職員の負担も抑えられています。
FL)業務プロセスの見直しと同時に行った施策はありますか?
古里さま)ログなどのデータを集計・分析することで、実際の対応にかかる時間や繁閑の時間帯が可視化されました。これにより、職員が対応すべき業務と委託可能な業務に分けたり、窓口来訪者の多い月曜日の人員を増やすなど、混雑する曜日・時間に合わせた対応ができるようになりました。
書かない窓口・窓口リレー方式を導入した申請については、QRコードを利用することで記入箇所はほぼ0になりました。紙への記入が困難だった高齢者だけではなく、小さなお子さまを抱えながら手続きに来られる住民にも便利になったと好評です。職員の目線はPCのキーボードではなくなっている様子もうかがえます。
今後は、案内カウンターから証明書発行まで、来庁者の動線に合わせた市庁舎の物理的なレイアウトの見直し、さらに市民の利便性向上を図っていく予定です。
八戸市庁舎レイアウト最適化基本計画(基本設計)(案)に対するパブリックコメントの実施について※P5 抜粋

FL)今後の展望や、追加で取り組みたい施策はありますか?
古里さま)市民へのプッシュ通知によるオンライン手続きの推進に注力したいです。市では市民がどのような申請を必要としているか、また各種手当て等の対象となる資格があるかなど、把握する体制が整っております。
これまでは法律やそれに基づく事務手続き上、市民にも書類を準備して窓口に来てもらう必要がありました。
今後は、手数料無料化なども視野に入れながら、「行かない窓口」の実現を進めたいと考えております。
フォリウムと取り組んだはちのへスマート窓口業務の可視化について
FL)データを可視化したことの効果はどのようなことがありましたか?
古里さま)窓口システムログデータをそのまま扱うのではなく、グラフ化や色付けして可視化したことで、曜日ごとの差や時間帯ごとの利用状況、さらには支所ごとの違いも分かりやすく見えるようになりました。夕方の時間帯や土曜日開庁についても、データに基づいて議論できるようになりました。Tableauを利用したことで、情報システムの関係職員だけではなく、課を横断してデータに基づいて議論ができるようになりました。
これまでも、職員の事務負担や窓口の稼働状況などについて庁内でもどのように体制を整えるかなどさまざまなな議論がされることがありましたが、データに基づいて議論できるので、各担当者や担当課の意見もより立体的に把握できるようになり、生産的に改革を進められるようになりました。
また、今回特徴的なのは、システムのログデータからの可視化だけではなく、市民・職員双方のアンケートを取得して、定量化したことです。これにより、システム導入の効果や利用状況と、職員や住民の感じていることとの相関関係が見られるようになりました。またアンケートでは満足度に関する数値データに加え、自由記述による定性的な意見も収集し、具体的な状況が把握できるようにもなりました。子どもを抱えてこられる市民の声などは重要な参考になっています。
アンケート調査も組み合わせたことにより、私たちが進めてきたはちのへスマート窓口事業が間違っていなかったことが説明できるようになったと思います。
副次的な成果として、今回の八戸市の取り組みを民間企業の集まる団体に説明する機会があったのですが、窓口業務を対応されている企業には特に好評でした。

地域のIT系企業への期待
FL)今回、八戸IT・テレマーケティング未来創造協議会で誘致企業の1つであるフォリウムで携わらせていただきましたが、どのようなご評価でしょうか?また、今後、地域の企業への期待がありましたらお知らせください。
古里さま)今まではシステム開発やデータ分析などは首都圏の企業などが中心を担うという傾向がありましたが、徐々に変わってきていると感じています。八戸市デジタル推進計画についても、八戸市職員を中心に策定し、主に八戸市に関係する有識者からの助言をいただくなどして進めてきました。
特に今回のようなデータ分析は八戸にあるフォリウムで良かったと思っています。普段からデータ分析や集計業務をされていることから、対応スピードも速く、分かりやすくイメージ通りの可視化を実現してくれて助かりました。
たとえば曜日に加えて、六曜による傾向も確認できました。結果として、六曜の影響は少なかったもののそうしたことを把握することが大切です。
先に述べたとおり、データの可視化によって庁内横断的に議論ができるようになりました。
アンケート業務も含めて大手の企業ともそん色なくやってくれたと思っています。
今後については、八戸市のデジタル推進事業の一環で、2月22日(土)~23日(日)に実施した「オープンデータを活用したハッカソン」においても、学生や企業の参加者から多くの事業アイデアが出てきていました。こうした取り組みを踏まえて、行政はもとより地域のデータ活用について産官学で連携できる仕組みをつくることができたらと考えています。

古里さまからお話を伺ってみての感想
緒方)改めてデータ分析を通じた可視化の効果を感じることができました。普段は古里さまとのコミュニケーションが中心でしたので、庁内横断で利用されていることまで思い至りませんでしたが、データの持つ力が職員や市民の皆さまのお役に立っていることを知り、嬉しく思いました。
中野)どのような切り口でデータをお見せすると理解しやすいか試行錯誤するところも多くありましたが、古里さまからは明示的にお伝えもあったので進めやすかったです。
市民・職員アンケートを分析していても満足度が上がっていることと、その満足度に時間短縮や利便性が相関していることの気づきがあり、アンケート調査経験を活かせましたし、エンジニアとしても楽しく事業を進めることができました。実際にデータをもとに組織や庁舎のレイアウトまでも変更しようという八戸市の取り組みを伺い、私たちもまだまだ事業で貢献できるところを増やしたいと思いました。
本プロジェクトの目的・課題・効果などについて、当サイト内で「事例」として掲載しています。
ぜひご覧ください。
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