foliumブログ

2023/11/10

エンジニア,勉強会,データ活用,山口

これからの分散的な暮らし方と働き方 〜人口減少と人口の疎・密が並行する社会で〜

「暮らしたい場所で輝く未来」を実現しようとしている社内外の人にフォリウムの社員が聞くシリーズ、第2回です。

今回は元ヤフー出身で現在は兵庫大学教授の宮﨑さんに、八戸市デジタル推進懇談会座長を務めた紺野がお話を伺いました。

宮﨑さんに紺野がお会いしたのは、2018年の春頃で、八戸IT・テレマーケティング未来創造協議会の仕事がきっかけです。ヤフーを退職された宮﨑さんが兵庫に活動拠点をもっていることから「山口も意外と近いですからお越しいただけませんか」と依頼し、9月8日、山口センターでのイベント開催に繋がりました。

今回講演していただいた宮﨑光世さん
今回講演していただいた宮﨑光世さん

東京・兵庫の2拠点での暮らしと仕事

紺野)ヤフーを退職されたあと兵庫大学で教鞭をとられていたり、神戸市CDO補佐官や宝塚市CXO補佐官をされたりなどしていますが、基本的には兵庫を拠点に活動されているんですか?

宮﨑)生活のベースは変わらず東京なんです。変わったのは1週間の過ごし方で、加古川市にある兵庫大学に通うようになったことです。

水・木・金で兵庫大学に行き、金曜の夜に東京に戻る生活をしています。兵庫大学への通勤は実家からです。大学が夏休みの間は東京にいます。神戸市など自治体の仕事はほぼオンラインです。転職したから自由にできる働き方だと思います。

会社勤めのときには、複業※は認められていたものの平日にこうした自治体の仕事を入れるのは難しいところもありました。比較的、自由が効く大学で働くことで今の仕事の仕方が成り立っています。

※複業とは

本業として営む仕事を複数抱えている状態のこと

計画的なキャリアではなかった

紺野)なかなか他にはない働き方ですね。こうしたキャリアを歩みたいと思っている人も多くいるような気がします。
大学教授になるというのは、そう簡単ではないでしょうし、どんな準備・計画ができるのか謎なんですが、いつかは大学教授になろうって考えていたんですか?

宮﨑)兵庫大学で働くことについては、実は降って湧いた話な感じです。
ある日突然大学の先生からメッセンジャーで打診めいた話が届きまして…。
やり取りしたこともほぼなかったんですが、それで…。

紺野)いやいや、突然のメッセンジャーでの話だけで大学教授にはなれないと思いますよ〜(笑)
何かきっかけや縁があったんじゃないでしょうか…。
団塊世代の同年代や会社員からいずれ大学教授になりたいと思っている人のためにも教えていただきたく。

宮﨑)以前、神戸市の仕事でシリコンバレーツアーをしていたことがありまして、そこに兵庫大学の先生も来ていました。その神戸市の仕事はもともとCode for Japanのコーポレートフェローシップから始まっています。これは企業から自治体に派遣される事業なんですが、2015年にヤフーにも案内が来まして…。

社内で転送・転送されて上司から案内がありました。私自身、社内だけではなく社外や社会との新しいつながりもつくりたいと思っていたタイミングでしたので、行くことにしました。
元をたどるとそのときの縁ですね。

インタビューの様子
インタビューの様子

地元の大学で教えるということ

紺野)そうした新しい取り組みに手を挙げてやってみるというのがポイントですね。
やったからといって大学教授になれるわけではないのでしょうけど、次のキャリアのきっかけをつくることができるかもしれないということですね。
働く場所に大学を選んでみて、どのような意義を感じているかを教えてもらえますか。

宮﨑)もともと大学で働くのは絶対合わないと思っているところがありました。大学院も中退でしたし…。ただ実家に近いし母校だった高校にも近い。実家から通える大学でなければ転職するのは難しかったかもしれません。

明石出身の私にも地元の大学と思えるのが良かったですし、企業での実務経験を評価してくれていました。兵庫大学のある加古川市やその周辺の地域も、いわゆる地方都市なので最初から首都圏や都市部に進学する人材はいます。

他方で地元に残る人材もいて、そうした人材が通える大学があるというのは共感するところがありました。生活や暮らしは一極集中ではなく分散していくことが大切なんじゃないかという考えが昔からありましたから。

全く知らない地域に私が行くと迷惑かもしれないけれど地元ならちょうど良いかも、そして50歳を過ぎてくると地元が好きだったかどうかなどのこだわりがなくなっていました。同世代との人間関係も競うのではなく、よくこの年齢までお互い生きてきたな〜という感じです。東京との2拠点なのでちょうどいい関係を地元とつくれるかなと思うようになりました。

いまは兵庫大学での教えがいを感じています。学生たちが真っ直ぐに物事を受け取ろうとしていることが伝わってきます。
以前、いくつかのいわゆる有名な大学で講義をしたことはあったのですが、そうしたことが感じられないこともありました。素直な学生たちが、他人との比較よりも自分や地域のことについて考えようとしていると感じられるのは、地方の大学の良さかもしれません。

首都圏に本社のある大きな会社や団体などの組織の中で偉くなっていくというよりは、次の地域社会をつくっていく人材に教えているという実感があります。


地域にどっぷり、八戸での事業

紺野)宮﨑さんにとって地域での仕事という意味では、八戸も欠かせないですね。八戸での事業というのは、ご自身にとってどのような意味があったと思いますか?

宮﨑)ヤフーの八戸センターではどっぷり事業を八戸の人たちと一緒にやるところからでした。人集めから社内の仕事の分担まで多くのことをしました。そして事業や組織をつくるにあたり、八戸で様々な事業家や経営者、自治体の職員とも会いました。気質的に自分には八戸という場所も人も相性が良かったなぁ〜と思っています。

ヤフーの中でも八戸センターの事業は重要です。八戸センターは地元の人たちがほとんどでしたので、大学卒業して入社した人や主婦だった人、地元の工場での仕事がなくなって転職してきた人など、多様な地域の人がいました。

多くはITに関わってきた人たちではありませんでしたし、八戸ではヤフーと言われてもどこの会社だろうという受け取られ方から始まっていました。
そうした人たちと事業が変わっていく中でも一緒に働けたのと、入社された方々がやったことがない仕事を覚えてもらうところから始め、それぞれの成長を支援したりキャリア発展に向けた人事的な仕組みづくりをすることができたのは、自分にとっても大きな経験になりました。

フォリウムでの勉強会の様子
フォリウムでの勉強会の様子

社会の分散を理解し考えるということ

紺野)ぜひ、引き続き八戸にも関わってほしいですね〜。2つの大学もありますし。

先ほど地元の大学に転職したときのもとにあった考え方として「分散」というお話がありました。
私も日本社会においては、首都圏への一極集中よりは、もう少し暮らし方や働き方を分散できたほう良いんじゃないかと、年齢や経験、故郷、フォリウムの八戸・山口拠点も含めて様々な地域に関わるとともに感じるようにはなりましたが、宮﨑さんはいつごろから考えていたのでしょうか。

宮﨑)「分散」という考え方については、子どもの頃から思っていました。なのでいつ考えたという記憶ははっきりとはないんです。大学での専攻も地理学を選んでいて各地域のことの理解を深め、フィールドワークなどもしていました。自分自身がどうしたいかというと、いろんなところに行きたいという気持ちが子どもの頃からありました。

今は主に東京・兵庫の2拠点の行き来ではありますが、実際にいろんな場所・地域に行っていますし、様々な自治体の仕事に携わることができています。そうした中で改めて思うことがあります。
人口が拡大する時代は各地域で不足に対して競争的にものや社会インフラをつくっていけば良かったので、何をするかという意味では難しくなかった。地域のデータの見方も今とは違っていたことでしょう。

しかし、今・これからは人口が減っていく時代。どの社会インフラや行政サービスを残すかどうか、維持するかどうか、選択せざるを得ないことがすでに多くあります。
地域データを見るときに全国や都道府県・市町村単位での代表値だけでは見えないのです。日本全国が同じように人口が減っているわけではなく、たとえば小学校区などで分布を見ると同じ自治体の中でも、人口の疎と密とが進行していることがわかります。

なので、適切な粒度に分解してデータを示していき、各地域で関係者が意思決定できる範囲でどうしたいかを考えていくことが大切です。疎のところの暮らしや人々の住む場所の自己決定を否定するわけではありません。ただ社会インフラをこれまでと同じように拡大・維持していくことはできない時代です。疎と密で表現される分散の状態をデータで正しく理解していきながら、日本の各地域で暮らすことの幸福感を考えていきたいと思っています。

住みやすさや幸福感はお金の多寡や人口の多さだけではなく、地域や街の文化、人々の関わり方が影響することも多いです。
データから地域の実情やこれからの見込みが明らかになっただけではその地域のみなさんが力を合わせるのは難しいのですが、私自身が関わりを持っている尾道の瀬戸田や米子の皆生温泉などでは、今回のイベントで事例紹介したとおり、皆さんで地域データを分析しながらKPIを設定するなど、より良くしようと力を合わせています。

意志を持った人材がデータを使う、もしくはデータを分析することが得意な人材を仲間にいれることで地域が変わっていく様子を見てきました。自治体においても同様です。
これまで地方から進学や就職で首都圏に行った人材が、いつしか組織の中で均質化されてしまったのではないかと感じることがあります。

人材が地域に分散することで、暮らし方や働き方も変わるし、当事者の幸福感も変わるのではないかと思っています。各地域には同じような人材の集団の中での競争よりも、多様な人材によってつくる環境や活躍できる場があります。

私自身は、これからも縁のある地域でDXやITを通じて住みやすく持続可能にするようなことをやっていきたいと思っています。

インタビューの様子
インタビューの様子

紺野)お話を聞いていて気がついたのは、宮﨑さんの「分散」の概念がスタティックなものではなく、ダイナミックなものだということです。そのダイナミズムは人が生み出すものですね。

新山口駅周辺も少しずつ変わってきていますし、私たちもこの地に拠点を設けられているので、働くことや暮らすことの選択肢に入る場所にしたいと思っています。首都圏一極集中からの分散を目標にするというよりは、そうした営みが結果的に暮らす場所・働く場所の分散につながるのかなと思っています。

宮﨑さん自身が時間や場所の使い方でも「分散」を体現されているのは、これからの暮らし方・働き方という意味でもとても刺激になります。これからはミスター検索ではなく、「ミスター分散」でどうですかね(笑)

八戸に加えて山口の関係人口になって欲しいと思っていますので、また山口にお越しください。


フォリウムでは、ITエンジニアを募集しています。
毎月第3水曜日に、オンラインでも参加できる企業説明会を実施していますので、お気軽にお問い合わせください。
foliumって、どんなところ?
foliumのITエンジニア採用情報
folium公式YouTube

【本件に関するお問い合わせ先】
株式会社フォリウム
コーポレートコミュニケーション室
お問い合わせ:https://www.folium.co.jp/sds/contact/

「この街とつながる、輝く」カテゴリ一覧

TOPへ