foliumブログ

2023/12/19

エンジニア,勉強会,データ活用,山口

珈琲をエンジニアリングしながら、山口に新しい生活文化をもたらしたい(前編)

「暮らしたい場所で輝く未来」を実現しようとしている社内外の人にフォリウムの社員が聞くシリーズ、第3回です。前後編に分けて掲載します。

今回は山口市中心商店街にあるLOG COFFEE ROASTERSの武本さんに、自宅では萩焼のカップにコーヒーを淹れて飲んでいる紺野がお話を伺いました。

紺野が武本さんのお店に初めてコーヒーを買い求めに行ったのは、2023年夏。
再訪したときに、コーヒー談義で盛り上がり分析的な視点やマーケティング観点でもセミナーを実施していただけるなら、企業向け講習会をやってみませんかとご相談し、何度かやり取りした後、11月10日、山口センターにて主にフォリウム社内向けのイベントを実施することにしました。

講演していただいた武本直樹さん
講演していただいた武本直樹さん

偶然、コーヒーと出会う、20代後半で

紺野)以前からネットの記事などでお店を知っていたのですが、この夏にLOG COFFEE ROASTERSに入ってみて、整った内装とカラフルなパッケージのデザイン、お客様がお店とコーヒー豆を馴染みにしている感じが伝わってきました。

もともとコーヒーショップをしてみたいといったことを考えていたのでしょうか?

武本)コーヒーに出会ったのはたまたまなんです。
大学院卒業後は自動車メーカーでブレーキ開発のエンジニアとして働いていました。
ただ、いつかは山口に帰ってきたいと思っていました。

学生時代からカフェバーでのアルバイト経験から飲食業に魅力を感じ、やるならサービス業かなと考えていました。
たまたま知り合いがゲストハウスをオープンするので、オープニングスタッフで来ないかと声がかかり、転職してスタッフになりました。岡山県西粟倉村です。

スタッフになったところ、そのゲストハウス管理会社の社長からコーヒーでもやってみたらと言われたのです。27,28歳の頃でした。
そこでコーヒーに魅了され、コーヒー一本でいきたいと考え、スタッフの仕事はもう少し長い期間働かないといけなかったんですが、始めるなら早い方がいいと思い、社長にもお伝えして独立に向けて準備に入りました。

紺野)え、大学院を出て入社した自動車メーカーを辞めてというのも驚きですが、社長にコーヒーでもやってみたらでやってしまう27,28歳って、なかなかですね(笑)

武本)今の自分から見てもちょっとヤバい奴な気がします(笑)。
同じようなことを言っている27,28歳がいたらちょっと待てと言いますね〜。

コーヒー豆を挽く武本さん
コーヒー豆を挽く武本さん

紺野)大学でも理系を歩んでこられたんでしたよね。
武本さんのコーヒーの解説や考え方を知っているからなんとなく理解できるものの、改めてどんなことを学んできたんですか?

武本)大学は数理学科だったんです。ただ、大学数学と高校数学は違っていまして、高校数学は答えがあるんですが、大学数学は公式の理由を考えて証明するというのがメインで挫折しました。

就職されている方々もシステムエンジニアや先生、人によっては営業などになっていくんですが、実は就職先があまりなかったりします。
そこで大学院では工学系に転部しました。電子デバイスを学んでいました。
そして就職は自動車メーカーです。

企業なので電子デバイスを学んでいたからと言ってその部署に行くというわけではなく、新型量産車のブレーキ設計の部署に配属され、量産車のブレーキの設計開発や実験に従事していました。

紺野)仕事の内容はさておき、ここまでの流れは理解できます(笑)

コーヒーの魅力と事業の可能性

武本)会社は広島でしたが、実家が下関でしたし、自分は長男。
いつかは山口に帰ってこないとと思っていました。
いつかはサービス業や飲食業をやりたいと思っていたところに、最初にお話したようにたまたまのタイミングが重なりました。

コーヒーに目覚めたのちは、まずは2年半の間をコーヒーショップで働き、そこで経営や技術を学びました。
コーヒーがどうやったら美味しくなるか、考えるのが飽きないんです。


一方でコーヒーの美味しさへの興味関心だけではなく、ビジネスとして別軸で飲食業の可能性を考えたときに社会的な観点でお客さんが喜んでもらえること、市場的な観点で需要があることも魅力でした。
サービス業をやりたいと思っていたときに、それを具体的に実現するツールとしてコーヒーが当てはまりました。

正直、自分で淹れてみて試して美味しくなかったなというときもあります。
あるいは狙った味が出ていたとしても、この味ではなくもっと美味しいところにアプローチができるんじゃないかと思うこともあります。

これだ!と言えるコーヒーとはなんだろうって思います。
分からないから飽きないと思っています。

紺野)コーヒーの味にはたくさんのパラメータがあることを感じます。
普段は美味しいという表現に集約されがちですが、その美味しさというものが分解と組み合わせで理解すると感覚も深まるのかなと思っており、今回、社員を中心とした社内イベントをやる意味と意義を感じました。

武本)ただ美味しいということだけから、さらに感動をもたらせられるか、考えています。
そこには数字や数学的なものが噛み合ってくるはずだと。
もともと、子どもの頃から数字あそびが好きでした。

私自身のそうした数字への志向性とコーヒーの味覚の可能性がマッチして繋がったんだと思います。
なぜ、美味しいかを数値化して遊べるところがあります。
コーヒー豆から飲むまでの一連の工程では、数字を入れ替えて遊んでいる感覚があります。
どの数字を変えたらどう味が変わっていくか?

コーヒーの淹れ方をレクチャーする武本さんと、聞き入るフォリウム社員
コーヒーの淹れ方をレクチャーする武本さんと、聞き入るフォリウム社員

味覚をどうデータ化するか?

紺野)改めて味覚などの感覚をデータ化したり可視化することの難しさはありますよね。

音である話している言葉と、文字に落とされた言葉との組み合わせと違って、味の感覚を今ある言葉にマッチさせるのは難しいことですし、感じ方の個体差、その日の体調による違いもあることでしょう。

そこに面白さや可能性も感じますが、ビジネスにおいてはどのように伝えているのでしょうか。

武本)その通りで、人によって違います。
自分が美味しいからと言って、他の人が美味しいというわけでもありません。
そうした感覚をどう表現するかを考えること自体が面白いと考えています。


実際にお店での販売で、人に伝えるときは感覚的な表現を使います。
あくまで感覚的な表現で説明はするんですが、最後は様々な味の幅を楽しんでほしいとお伝えします。
お客様の質問や表現範囲によって私も伝え方を工夫します。
抽象的な言い方もしますし、具体的に伝えることもあります。

抽出では味覚の要素が記載されているCoffee Mapを使って淹れたコーヒーがMapのどのゾーンに位置しているかを考えて、良くするための方向性を捉えていきます。
その感覚を実現するために、コーヒーを淹れて飲んでいただくまでの工程の様々な数字を押さえていきます。

ただ同じようにしたつもりでも、人の癖などによってある程度の違いの幅は出ますし、コーヒーの味自体も日々変化するため精度も異なることもあります。
それでも品質観点では数値化することは必要な行為ですので、味覚とは別に意識して取り組んでいます。

インタビューの様子
インタビューの様子

紺野)武本さんのようなプロと、私たち消費者との間で共通の理解をできるようにするにはどのようなことができれば良いのでしょうか。

無理だろうなと思いつつ、味覚の範囲や深さの共通理解ができれば、自分が欲しているものを表現できそうですし、もう一度あの味を飲みたいと思ったときに再現できるかもしれません。

武本)まずは五味から感じてもらうのが良いかもしれません。
「甘味」、「塩味」、「酸味」、「苦味」、「うま味」です。

これらを自分なりに表現して感じてもらうのが良いと思います。
あるいは、今日のイベントで実施するテイストチャートというのもあります。
味を色で表現するといったことも使われる方法です。
たとえば赤はチェリーやリンゴといった果物を想起させます。あとは甘酸っぱい味なのか、やわらかい味なのかなどで、具体的な果物に落とし込んでいきます。

ワインでも使われるぶどう以外の果実の味表現も参考になりますね。
たとえば「チェリーのような味」といった表現をしますが、私たちの過去の食体験からの連想を膨らませていくことも大切です。
コーヒーにはチェリーは入っていませんので錯覚でもあるのですが、表現を具体的にしていくことがポイントです。

コーヒーを巡るテクノロジーの可能性

紺野)グーグル出身者のコーヒーショップが話題になったことがありました。
コーヒーも道具が変わってきたり、テクノロジーの進化の影響を受けているのでしょうか。

武本)細かいところの改善や気がつくための道具は進化しています。
WDT(Weiss Distribution Technique)というテクニックがあります。
コーヒーを粉にしたときに、針を使ってかき混ぜる方法です。
かき混ぜたあとにセットしてコーヒーを抽出します。
コーヒーには静電気もあり、それが玉になってしまい、そのままお湯を淹れても味が抽出されないままになります。そこでほぐすというようなこともしています。

また、コーヒーの抽出途中で冷やすという技法もあります。抽出されたコーヒーが下に向かって落ちるときに冷えた鉄球に伝わってサーバーに落ちていくという手法です。
これをすることで、揮発性の高い香気成分が残ると言われています。

何が美味しいと感じるかが分かってきているので、道具・技術ともに進化してきています。
主に欧米やオーストラリアなどの海外で研究されてきているように感じます。

紺野)何がコーヒーの美味しさなのか、精緻に分解されて理解されつつあるということですね。
今回のイベントでは紙コップで飲み比べをしますが、器によっても味は変わりますよね。

武本)厚さ・薄さ、形状によっても、大きさによっても味は変わります。
特に薄さ・厚さのバランスが重要だと考えています。
薄ければ良いというものではなく、薄くなれば保温性が保ちにくくなります。
他方で保温性を高めるために厚くすると、繊細さがかけるようにもなります。
カップが厚いと深いところで飲むため舌を押し上げ、押し下げられたところにコーヒーが届かず喉に行きやすいのです。
それで繊細さを感じにくいところもあります。

LOG COFFEE ROASTERS facebookより
LOG COFFEE ROASTERS facebookより


紺野)コーヒーの器もワインのように趣向を凝らしてきていると感じます。
ネットで見たレベルですが、光洋陶器が手がけるお店ではコーヒーによって3種類の異なる陶器での飲み比べをするということで、驚きました。
コーヒー店でカップへのこだわりを感じることも多いです。

武本)コーヒーカップもワイングラスをモチーフにしてつくっているものが出てきています。
こうしたカップで飲むとアロマを感じやすくなります。
コンビニなどで提供されるテイクアウトカップが熱く感じるのは、口元から口の中へのコーヒーの流れ方の違いもあると思います。
お店で使っているカップですが、ORIGAMIのものを使っています。
使いやすいのと飲み口がいいんです。
コーヒーに特化してデザインされており、光洋陶器で製造しています。
お店でも販売していますので、買っていく人もいます。

紺野)色もカラフルでキレイですよね。

武本)お店で飲むときに、普段使っているカップやテイクアウトカップとの違いを感じてもらうのも良いでしょう。
ただ、家で飲むときには気に入ったものを選んで使うのが良いですよと伝えています。

トータルの空間や時間で感じ方は変わってきますし、何より気に入ったもので楽しむのが良いと思います。
カップによって確かに味の感じ方は変わりますが、優先すべきは気に入ったものであること。
自分にマッチするものがあれば理想だと思います。

紺野)以前、保温性の高いダブルウォールグラスで飲んだときも新鮮でしたが、個人的には陶器で飲むのが美味しいと感じています。
というわけで萩焼のコーヒーの器を愛用しています。
なんとなく気分も良くなります。

武本)それで良いと思います。自分が気に入ったもので飲むのが大切です。

(後編に続く)

お話を伺った武本さん
お話を伺った武本さん

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